三好史織さんの工房探訪記/2023年2月

nanamentでも取り扱わせていただいている作家、三好史織さんに会うため愛知県常滑市へ行ってきました。

常滑焼の工房近くにある猫のモニュメント写真

青空の下、いつもお出迎えしてくれる猫に会い、窯や工房が立ち並ぶ路地を抜けたところに三好さんの工房はありました。

何人かの作家の人たちが制作活動をしている古い建物の一角です。

アレンジされた、居心地の良さそうな工房

土壁と昭和の懐かしいガラスがある古いけれど雰囲気のある建物は、隙間風が入るので冬は寒く夏はとても暑いそうです。

寒さ対策に隙間風が入らないようにしたり、暑さ対策に大きな扇風機があったり、いろんな工夫をされています。

三好史織さんの工房内写真

こぢんまりした作業場は使いやすいようアレンジされていて、手の届くところに道具があり居心地はとても良さそうです。

ろくろを挽く時に使用するとんぼは必要に応じて手作りをされているそうで、そのとんぼには作品の情報(土は何g使用し、サイズがいくつ)など書かれていました。

「すぐ忘れちゃうから書いておくんです」と仰っていました。

三好史織さんの工房内写真

冬は足元からしんしんと冷えるそうで、薬缶をかけたストーブが完備されています。

薬缶からの水蒸気でお肌には良さそう。

最初から最後まで、すべて一人で

制作は、すべての工程を一人で行います。

まずは土をこねて空気を抜くこと。
機械を使わずに自分でこねて、理想の硬さに仕上げます。

表100回裏100回と言われているそうで、合計200回!

上手くこねないと逆に空気が入り焼成した時に割れてしまうそうです。

三好史織さんの工房にて、捏ねた土を選別した写真

こねた土を分けて、石膏板に乗せて挽きます。

三好さん曰く、ろくろを挽く動作は皆同じように習うけれど、覚えたあとにどの指をどの角度で使って土を引き上げるのか、自分にあった方法を模索していくそうです。

その人だけのリズムを作り、手が覚えるまでろくろを挽き続けます。
何度も何度も。
そしてこれからもずっと。

三好史織さんの工房にて

成形した器は乾燥させたあと鉋(かんな)で形を整えて、700〜750℃で素焼きをします。

次は釉がけ(くすりがけ)です。

釉薬(ゆうやく)は三好さんがこだわっている大きなポイントのひとつで、いくつもの釉薬を混ぜ合わせて理想の色に仕上げます。

釉薬作りに使用する粉の色は見たままの発色ではなく、焼成後に変わります。

三好史織さんの工房内写真

例えば、このクロムはオレンジに。

どの薬剤をどれだけの分量で入れたか、実験を何度も繰り返し今の作品があります。

三好史織さんの工房内写真

同じ釉薬の配合でも、本焼成の時の窯の中の置き場所や、窯が冷める温度によっても変化があるそうで、最後の最後でがっかり…みたいなことはよくあるそうです。

1,235℃で本焼成し、高台などを削り仕上げをして完成です。

可愛げを感じる、ちいさな欠点

制作の工程で最も気を遣うところは、ろくろを挽く時と窯詰めだそうです。

ひとつひとつの成形に気を配り、焼成時は窯の癖を理解し、どうしたら熱が均等にまわるか考えながら行う、それでも、窯を開けたら割れていた、釉に気泡ができていた、知らないうちに傷がついていた、鉄粉(黒い黒子のような跡)がついていた…いくら気を配っても良品では販売できないものが出来上がることがあります。

これらの不具合品は、検品で弾かれ、廃棄するそうです。

お話を聞いていて、ここまで手間暇かけて作り上げたのに廃棄されるものがあるのは心苦しく思い、試しにnanamentで販売をしてみようと考えています。

つるりとした肌ではないかもしれませんが、ひとつふたつ欠点があるものも可愛げがあるのではないかと思ったり。

ただ、ものによっては釉がかかっていないところから油など沁みやすいものもあるかもしれず、このあたりは丁寧に説明いたします。

あと、使う時に怪我をするようなものは、当たり前ですが販売はしません。


焼き物は産地によって土が違い、その土地ごと特徴も違います。

でも基本はどれも同じで、土をこねて成形して焼成する。

同じ方法を学んでも、作る人によって選択する手法は限りなくあり、自分の方法を編み出しています。終わりのないこれらの作業は、良いものを作りたい、という作家の思いが詰め込まれています。

毎日、何気なく使う器に物語があること。思いを馳せると生活が楽しくなりそうです。

三好さんに「これから何をチャレンジしたいか」をお聞きしました。

ご本人が仰るには、

三好史織さんの工房内写真

「もっと釉薬の色や釉の掛け方など、バリエーションを増やしたりして釉薬で遊んでみたい」ということでした。

これからどんな器が出来上がるのかとても楽しみです。

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